ソロル部屋
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79.[あたなかさん] 『“IF”結んだその手で、静かにほどく』
初夏。縺れに縺れたこの大陸きっての戦線は、どちらも一進一退の攻防戦を繰り返し、血で血を洗う戦いへと発展しており、そろそろ停戦が噂されていた。しかし全体の戦況を見れば、圧倒的にミヨイクニが強く、ミヨイクニとしてはこのままこの戦線を押し上げ、統率のとれたタミアラ国の数師団を分断し、囲い込んでしまいたいところであった。そのために新しい師団が送り込まれ、精鋭の一個師団を統率する立場である、“師団参謀長”である男が配属の任を受けた。
「どうしても、敵国の防衛を突破できません」
泣きを入れてくる今までの現場の責任者である中佐が、広げた地形図の上で悔し気に呻いているのを聞き、今回配属の流れとなった師団参謀長トントンは、今すぐこの男の喉に剣で大きな風穴を開けてやりたい気持ちでいた。相手の汚れた血を大地へ還してやりたいのはやまやまであったが、ここで事を起こすわけにもいかず、地形図へ掌を強く叩きつける。周囲の人間がびくりとし、姿勢を正した。
「中佐、貴様は随分とエリートの出身だったみたいやな、その割に貴様のお頭には何が詰まっとるんや。何の役にも立たねば、糞以下やぞ」
「も、申し訳ございません、師団参謀長……」
青くなった目の前の男の突き出た腹を凍てつく赤い瞳で一瞥し、本当なら紡ぎたくもない言葉を続ける。
「軍事地理を学ぶには、人類地理、自然地理は勿論、気候や風土、部族や宗教まで、全ての背景を知っておかなければならん。敵はあらゆる手段、あらゆる知識を持って、不利な状況で戦陣を維持し続けている。これは一軍人として、幹部として恥ずべきことや。そこが理解できんのなら、今すぐ本部に泣きでも入れてとっとと帰ってくれへんか。隊の士気が維持できん」
いますぐ動け無能共、と地の底から響くような峭刻(しょうこく)たる言葉と声に、歴戦の軍人も息をのんで機敏に従うしかないのであった。 09/25 17:29 PC PC
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