ソロル部屋
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82.[あたなかさん] 「せやな、ここへ来るぐらいやから、自白剤や拷問ぐらいじゃこいつは吐かんやろ。処遇の話し合いをしている間に逃げ出されたり、自殺されても困る」
シューッと細い音をたてて、長年使い込まれた見事なシャシュカが抜き放たれれば、男の顔色がサッと青ざめた。頼む、何でも話す、見逃してくれ。そんな言葉は耳が腐るほど聞いてきた。そして誰も、誠実に話す奴がいない事も、トントンはよくよく知っている。一切の情や迷いのない剣を振り下ろせば、断末魔と共に首が地へと転がり落ちた。
狐が処刑された。荒野の高台に、彼の、彼自身の体による遺物がこれ見よがしに残されていた。それを受けてタミアラの軍勢は大いに恐怖した。
「あんな事ができるなんて、やはり悪魔だ」
「違う、悪魔などではない! 惑わされるな、士気を下げるな!」
グルッペンは必死に統率をはかるが、死に直面した人間は、これほどまでに弱かった。誰であれ、死にたくなどない。それはグルッペンも同じであった。彼には結婚を約束した最愛の女性がいて、故郷で彼の帰りを待っているからだ。しかし、案の定グルッペンが危惧していた事が起こる。ミヨイクニはこの隙を突いてきたのだ。たちまちに前線は分断され、インフラを破壊されて補給を断たれた。囲い込まれて殲滅されるのも時間の問題だ。
夏日の戦場での太陽は、水を失っていく体を容赦なく照らし続ける。ハァハァと上がる息、貼りつく喉と倒れていく仲間。自分の水筒を確認する。もう、あと少しだ。
「ほら、俺のを飲め。生きて帰るんだからな」
「ぐ、グルッペン、少将……」
「遠慮はいらん、ほら」
自分の体で支えた隊員の口へ、水を流し込んでやり、自分は自らの流した血を舐め渇きに耐える。胃へと落ち込む血が、吐き気を催すが、贅沢は言ってられない。一人でも多くの仲間と、この戦線を離脱することが今の自分の使命だ。 09/25 17:31 PC PC
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