ソロル部屋
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83.[あたなかさん] ミヨイクニの強襲により、自軍の部隊は見事に分断した。相当の知将がいる、その正体も解っている。徐々に輪を狭めるように、的確に追い立てられてゆく。それは解っていたが、仲間たちには最後まで、希望を与えたい。だが、結局最後まで守ろうとした部下は、自分の腕の中で死んでいった。敵影から熱っぽく鉛のような己の体を隠すように、寄り掛かった大きな戦車はすでに砂礫に埋まり動かない。きっと自分も、ここで死ぬのだろう。だが敵の辱めを受けて死ぬよりは、幾分かましであった。
グルッペンは最期の時間を使い、懺悔した。故郷に、同期に、そして許嫁に。それから幼少の頃の赤い翼を思い出した。不思議と、怨みは湧いてこなかった。ただ許してほしい、傷つかないで欲しいと、星を見上げる。流せる涙は、体内の水分を失いすでに枯れ果てていた。それでもグルッペンの心は、七つ下がりの雨のように、泣き止むことはなかった。
タミアラ国は重要な戦陣を放棄し、停戦を申し出てきた。ミヨイクニはそれを飲み、領土の割譲を条件に一時休戦と相成った。
それを受け、ミヨイクニは残党の処理や、自軍や捕虜の救出などに乗り出す事となった。トントンもそのままこの場所へと留まり、現場の指揮をとることとなった。ムッとするような匂いの広がる地へと足を踏み入れる。自分が分断させ、囲い込んで大勢を殺した土地だ。ザクリと軍靴で荒野を踏みしめ台地へ立てば、この大地が吸った血が、恨みとなって自分の体に纏わりついてくるのではないかという錯覚すら起こしそうだ。しかし、そんな考えはすぐに消え去った。恨んだところで、死んだ者に何ができるのだ。
「弱い者は死ぬ。強い者は生き残る……死は平等や。俺は、生き抜いた」
そう呟けば剣を抜き、亡者の怨嗟を切り伏せるかの如く、大地へ深々と突き刺した。
多くの兵を連れ、電撃戦が決行され、瓦礫と化した地を進みゆく。地面にはくっきりと戦車の轍が残り、まだ敵味方関係なく多くの遺体が転がっている。蛆や蠅がわき、馬が歩くのに合わせてぶわんと黒い塊が動いた。 09/25 17:32 PC PC
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