ソロル部屋
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105.[なにもナイ] これはまだ、もう一波乱ありそうだ。鬱は久々に背骨をのばし、なんとかこの会食を無難に乗り切ろうと決心した。
会食は和やかな雰囲気で始まった。コネシマとは離れた席になってしまったが、グルッペンが鬱に気付いて、こっちへ来いと隣へ呼んでくれたおかげで助かった。グルッペンの左隣へ腰かける。この現場での最高階級に対しては誰も意見はできず、鬱の席順は決まっていたそれとは違ってしまったが、誰も抗議するものはいなかった。
「久しぶりだな鬱少尉。飯はちゃんと食べているか?」
グルッペンの人懐っこい笑顔と、そのバリトンの声が、昔の事を思い起こさせ酷く懐かしい気分にさせた。
「まぁ、おかげさんで昔よりは。グルちゃ……グルッペン中佐もお変わりなく」
「フフフ、グルちゃんか、懐かしいなァその響きは」
周囲の目が友好的になったのを、鬱は見逃さなかった。グルッペンに肩を叩かれ親しそうに話す鬱に羨望が浴びせかけられ、鬱はほくそ笑んだ。本当に大抵の人間は、金と権力に弱い生き物であると、心で唾を吐き捨てる。そんな攻防が起こっている事を、目の前でニコニコとしているグルッペンは全く解っていないのだろう。そういう意味では、グルッペンは純真そのものであった。彼の生い立ちはとても恵まれていたので、心の教育も非常に美しく正しく行われていた。
しばし談笑していると、最後に扉から入ってきたトントンが、自分の後ろを通ってグルッペンの右隣へと向かう……そんな彼が鬱の後ろで急に足を止めた。そんな何気ない動作ひとつで、その場の空気が凍り付いた。
「……匂う、煙草」
ぼそりと呟かれたその言葉は、恐らく鬱とグルッペンぐらいにしか聞こえなかっただろう。再びカツカツと歩き出し、静かにグルッペンの右隣へと着座した。鬱はまるで氷水を頭から掛けられ、あの冷たい目が自分に降り注ぐかのように向けられているのかと思えば、全身の毛が逆立つかのような強い恐怖と寒気を感じ、そのまま固まった。これは、目をつけられただろうか……だがこのような席の手前、彼もそれ以上は言ってこなかった。
グルッペンは特にそれを気にする様子もなく、全員がテーブルに着いたのを確認し、労いの言葉を述べる。 10/02 19:36 PC PC
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