ソロル部屋
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109.[なにもナイ] 二人の交互に吐き出す煙は、まるで会話をするかのように、空へ形を描いては、うっすら消えゆく。コネシマは面倒見のいい男だ。きっと自分が今夜もここへ来るのを解っていて、覗きに来たのだろう。高い空には昨晩と同じように、美しい星々が輝いている。
「そういえば俺、また別の戦線に行くかもしれん。もう煙草貰えんようになるなぁ、残念や」
コネシマの言葉に、鬱はそうかと一つ頷いて、ふと自身の心に去来した寂しいという感情を、石壁に押し当てた煙草のようにもみ消した。仲間は持たない、そう思ってきたのに、グルッペンもトントンもコネシマも、自分の記憶中枢にしっかりと刻み込まれてしまった。でもそれも、なんだか少しだけ悪くない気がしてくるのは、この澄み切った空のお陰だったのだろうか。
もうじき戦争が、大陸全土へといきわたる。きっとここへも戦火が届く日が来る。自分は、そして今日出会った人々は、この闘争の果てにどんな死に方をするのだろう。だが今はそれもどうでもいい。今は胸いっぱいに煙を吸い込み、自分の心に芽生えたこの感情に霞をかけて、見えなくすることで精いっぱいであった。
完 10/02 19:41 PC PC
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