ソロル部屋
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164.[「夏おわ」ストックホルダーであるイヤンホホ氏の後見人ナイ] マリアはまるで少女が贈り物を貰って喜ぶ時のように無邪気に微笑み、手を合わせてその提案を受け入れてくれた。彼女がドアの向こうへ消えるまで見守り続け、扉が閉まったところで屋敷に背を向け、ほうっと息を吐いた。幸せな時間であった。エーミールの頭の中は既に手紙には何を書こうかと、そればかりが渦巻いていた。だが、視界の端に角を曲がっていく怪しい影を捉えて、首を傾げる。まるで今の自分とマリアのやりとりをずっと見られていたかのような後味の悪さが口の中へと残った。だが別に確証はなく、ただ人が通っただけかとも思える。しかし彼女の事はきちんと送り届けたのだから、大丈夫だろう。
それから数カ月間、彼女との楽しい文通が続き、段々と彼女の素性を知る事ができた。ヴェルディ家はこの大陸の学問発展に貢献してきた銘家で、彼女は財団を持っている父の跡を継ぐために、一人娘ながら勉学へと勤しんでいる事、沢山の事柄を積極的に知りたいという意欲に溢れた努力家である事など、文章から読み取る事ができた。その手紙はエーミールの単調な日常にも色彩を与え、いつしか自宅のアパートのドア下から手紙が滑り込んでくるのを待ち望むようになっていた。
ふと、自分は彼女に恋愛感情を抱いているのかと意識し始めたが、どうしてもそれを認めてしまってはいけない気がして、自らの心を否定した。そうしなければ、この美しい関係が壊れてしまいそうで、どことなく恐ろしかった。
「では皆さん、有意義な休暇を過ごしてくださいね。遊ぶばかりでなく一つでも研究に勤しみ、結果を求めてください。それでは、今日は終わりです」
明日から大学の長期の夏休暇が始まるとあって、生徒たちも既に解放された様な嬉し気な表情をしている。その浮かれように釘を刺しながらも、この中で一番浮かれているのは自分ではないかと少し笑ってしまう。休暇の前に出した手紙の返事が、今日あたり来る予定だ。彼女の都合のいい日取りを聞ければ、その日に合わせて自分が彼女の家の近くまで赴こうと思っていた。それまでに徹夜で仕事を全て済ませてしまった、心配事は一つでも減らしておく方がいいだろう。
「おかしいな、手紙が来てない……」 11/08 14:38 PC PC
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