夏の終わり
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『粛清! 家事ストライキ決行』 昨日のグルッペンによる媚薬騒動は、なんとか幕を閉じ、その問題は終結を迎えた……かに思われた。しかし、起床と同時に奇声を上げ、髪を乱し身悶える男がここに一人。それはグルッペンの悪戯の一番の被害者、トントンである。薬物耐性・女性経験共に持ち合わせていない彼に対し、薬は想像以上の効力を発揮してしまった。魔術の掛けられた媚薬は普通のそれとは違い、彼の心までもコントロールされてしまったのだ。 「最ッ……悪や! あんなの、俺の意思完全無視やんけッ!」 悪いことに、昨日の自分の痴態……いや、狂態がしっかりと脳内に記憶として残っている。かぁっと顔が熱くなり、首まで真っ赤になる。そんな自分の一番の被害者は、側で介抱してくれていたコネシマの後輩であるショッピであろう。彼の紫水晶のような瞳に吸い込まれそうになり、自分から顔を近付け、困惑した彼の顔……互いのまつ毛が触れ合い、吐息を感じられるほどの距離に…… 「あぁぁぁぁああ!!」 詳細を思い出せば出すほど彼に申し訳なく、そして己のしたことが本当に信じられなかった。そんな事今まで誰にもしたいとは思わず、実際にしたことはなかったのに、しかも男性に対してだ。きっと彼は自分のことを軽蔑したに違いない。しかもあの騒動の首謀者はグルッペンその人だ。トントンは恥辱で滲む涙を、枕に顔を押し付け堪えながら、両手で髪の毛をぐしゃりと掴み打ち震えた。ここで泣いてしまっては尚更自分が惨めで仕方がなくなりそうだった。その時、廊下に置いてある古い振り子の時計が、午前六時を厳かに告げる。普段ならばこの時間に起きて下へ行き、一人でキッチンへ立って全員分のご飯を作るのだが……その時トントンの脳裏に、手っ取り早く、かつ効果的な仕返しのアイデアが浮かんだ。 「……これは、粛清ですわ。決めた、今日は一日皆のご飯作らん」
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