夏の終わり
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『私に、答えてください』 「うちも随分な大所帯になったものだな」 独特なバリトンボイスが、書類を整理している赤いマフラーを巻いた男の背後から投げかけられる。その声の主グルッペンは、側でトントンが色々と書類を捌いているのに手伝わずに新聞を読んでいる。だがトントンもそれを気にする様子はない。 「そうですねぇ。半分は幽霊だけど、そこも所帯に含むん?」 「当たり前だろう、幽霊である私が当主なのだしな……そもそもお前だって私の赦しがあってここで住んでいられるのだから感謝しろ」 偉そうな家主の言葉に、トントンはわざと聞こえるように溜息を吐いた。そしてギロリと絶対零度の視線を送る。 「あーはいはい、それに関してはどこの国にも身を寄せる場所のない俺を助けてくれて感謝してますよ。でもねグルさん、俺がいなかったらアンタ、何もできないでしょう。1日だけ家を空けただけでなんですかあの体たらくは! 埃は溜まる、出したモンは片づけない、食事も」 「ストップストップ……わ、わかった、わかった。アレは俺が悪かった」 「ホンマに解ってます!?」 そのやり取りを書類棚の影から見ていた、すっかりお手伝い係が板についたオスマンと、新参者だが元々大学教授名だけあって有能なエーミールが、クスクスと笑いあう。 「本当にお二人は仲がおよろしいんですねえ」 「聞いてると長年連れ添った夫婦みたいめうー」 二人の何か含みを帯びた笑みを受け、グルッペンは新聞をサイドテーブルに置いて苦笑いをし、組んでいた脚を組み替える。 「まったく、本当に口うるさいヤツだ。こいつは昔は大人しかったのだがなァ……幼少の頃はよく俺の後ろについて来て、俺のやる事をなんでも真似して、色々と教えてやったものだ」 懐かし気に思い出を朗々と語りだすグルッペンに、トントンの筆が止まる。 彼は思い出した、俺との事を。あれだけ思い出さなかったのに、保管してあった幼少期から青年期にかけてのアルバムに触れた時に多量の記憶が戻って来たらしい。だが、グルッペンに戻った記憶は、今の自分の頭からは消え去っていて、それが一体どうしてなのかがよく解らない。あれだけ彼に自分の事を思い出してほしかったのに、今度は自分にその記憶がないなんて、まるで滑稽な喜劇のような話である。
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