夏の終わり
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『守護の牙』 「よーしよし、いいぞ、ほらもういっちょ!」 屋敷の裏手にゾムの声が響く。彼は手にした棒切れを、大きく振りかぶって遠くへと投げた。その影を追い、低い姿勢で地を走る獣が1匹。ゾムの飼い犬であるイフリートだ。正しくはただの犬ではなく、調べたところ、幻と言われるミヨイの狼の血を引く珍しい狼犬であった。数ヵ月間で体重は三倍になり、肩や足もがっしりと太く逞しい。それでもまだまだ子犬根性丸出しの元気なイフリートは、ゾムが愛情を惜しみなく注ぎ、育てている。 「すごいねゾム、もうこんなにいうこと聞くんだ」 「ひとらん! せやねん、めっちゃええ子やで。プロの訓練とかは解らんけど、自己流でもこんなに懐いてくれるんやんな!」 棒切れを咥えて戻ってきたイフリートの首を抱えるように抱きしめて、ゾムは遠慮なく笑顔を見せ、笑い声をたてる。唯一無二の親友を亡くし塞いでいた心が、戦後多くの仲間ができた事によりかなり本来の自分を取り戻せたようであった。そしてイフリートの存在が、ゾムの心の安らぎとなってくれている。ひとらんは目の前でイフリートと戯れる子供のようなゾムを見て、やはり彼にあの狼犬の命を託したのは間違いではなかったと確信し、嬉し気に見守った。 「畜舎の方にイフリートが入ってしまうと事故があったら困るしな……今度大きめの施錠できる犬小屋でも建てていいかを、グルッペンの叔父上にお伺いを立ててみるよ」 眼鏡を中指でクイと上げ、書類から目を離して静かな声でそう告げるのは、この屋敷の実質の管理責任者であるトントンだ。トントンは農家で生まれ育ったため、野犬や狼の被害をよく知っており、その上での懸念であった。やはり狼の血は普通の犬とは違い、本能が強い。ひとらんらんが大切に育てている豚や鶏などを襲ってしまっては、ゾムとひとらんの双方とも傷ついてしまうだろう事を心配しているのだ。それを聞いたゾムは、すこし不満顔である。
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