夏の終わり
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『夕焼け丘の鰯雲』 “善悪”の境界なんて、ハッキリした目に見えるものじゃない。常識や秩序を大切にする人間ほど、相手への攻撃能力が高いのは、自己への肯定が強いからに他ならない。対して拒絶されて育った人間は、自らを認められなくなり、自分の生きている意味を何度も自問する。そんな難しい事を小さな脳味噌で考える。だけど常に自分が悪になるこの世界では、何が善なのかを理解することはもう不可能だった。小さな水槽に入れられたメダカは、そこへ一滴の毒を落とされれば、忽(たちま)ち腹を見せて浮かぶしかないのだから。 秋も深まり、日中でも肌寒くなってきた。黒髪の少し焼けた肌をした少年は、いつもの様に早朝から台所へと立っていた。手際よく火をおこし、湯を沸かす。父母が起きてくる前には、朝食の準備を済ませていなくては、また何も食べさせてもらえないかもしれない。空腹というのは命の危機に直結する。絶食の辛さを幾度となく味わったことのあるトントンは、川の水を飲んでそれを我慢するのはもう嫌だった。しかし結局は自分に非がなかろうと、親の気分次第で何とでもされてしまう、まるで憂さ晴らしのゲームのように。この少年はそれをよくよく理解していた。 外へ出て裏手にある鶏小屋の扉を開けると、鶏たちが羽をばたつかせて逃げまどい、小屋の隅の方へと身を寄せ合った。トントンは表情のない赤い目でその哀れな畜生を眺めていた。おもむろに群れへと近付くと、そのうちの一羽の羽根を容赦なくつかみ、小屋の鍵をかける。鶏はトントンの手の中で、精一杯もがき続ける。手際よく脚に麻紐を括り付け、鶏は少年の手によって庭の木へと吊るされた。 「ここから逃げたって、誰が助けてくれるんや」 手にしたナイフは迷いなく、目の前の羽ばたきの頸動脈に一撃を加える。彼の服は返り血に染まり、そのSOSは誰にも聞き届けられる事はなかった。 「うわ、汚ねェ! 何の血だよそれ、気持ち悪い」 「村の大人が言ってたぜ、普通の子供はこんなことさせられないって」 いつもの声。鶏を煮て羽根を毟っていたトントンの元へ、同じ学区の生徒が近付いてくる。絡まれた少年は視線をやる事もなく、自分の手元の仕事に集中した。 「おい、無視するなよ赤目野郎」
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