夏の終わり
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それを聞いてトントンは俯いたまま眉を顰める。こんな立派な将校に、あんな薄汚い自分の家を見られるのは恥ずかしかった。自分の服に目を落とせば、こんな都会の町ではまず見かけないような穴あきだらけのボロを纏っている。悲しいような、空しいような、言い表せない感情が心に渦巻く。そんなトントンの気持ちなどまるで解っていないであろう将校は、トントンの肩に手をかけて、自分の車の後部座席へと招き入れた。軍用の車はとても大きく、こんな近くで目にするのは初めてだ。助手席にはゲラルトの妻であろう綺麗な女性が乗っており、トントンを見て優し気に微笑んだ。 「さ、お乗り」 ゲラルトに促されるがままに後部座席の方へ乗りこむと、黒い革張りのシートへちょこんと腰かけた、見目麗しい人物が目に飛び込んでくる。ぱっちりとした瞳はゲラルト譲りの青灰色、アッシュブロンドの髪がその人物を魅力的に見せていた。目が合うと、トントンはフラップの上で固まった。自分よりも年齢は三つ位上だろうか、しかしまるで自分とは対照的で、近付くのも憚られた。 「グルッペン、挨拶なさい」 「はい、母様」 グルッペンと呼ばれたその子は、しげしげとトントンを見まわし、そして今までのアルカイックスマイルはどこへやら、人懐っこい笑顔でにんまりと歯を見せ話しかけてきた。 「お前が今日から、俺の遊び相手になってくれるんやって?」 「え……」 「よろしくな、トン助!」 「あの、うわっ」 有無を言わさない様子で、フラップ上にいたトントンの腕を引っ張り、ドアを乱暴にしめて自分の隣へと無理やり座らせる。二人の激しい着座で、車が上下に動く。 「コラコラ、はしゃぐ気持ちも解るが、彼はまだ病み上がりなんだから加減してあげなさい」 「はぁーい父上〜!」 聞く気がないような気の抜けた返事を返し、グルッペンは座席に両手をついて、トントンの方をバッと見た。たったの十数センチまで顔を近付けられ、トントンは怯む。目を覗かれるのは好きではない。きっと気持ち悪がられる。 「おいトン助、帰ったら何して遊ぶ? チェスか? 枕投げか? それともかくれんぼか?」
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