夏の終わり
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リビングへ入ると、寒そうに身を縮こまらせているオスマンとコネシマの姿があり、見かねたトントンが暖炉へと火を入れた。 「寒いなら自分で火いれたらええやないですか、アホ先輩。ああ、アホだから解らなかったんですかね……」 「なんやとお前ぇ!? 解るわそのぐらい!」 「現に出来てないじゃないですか」 「自分でやるのが単にめんどくさかったんじゃ」 ショッピとコネシマのいつもの掛け合いを聞きながら、ポットに水を入れ火にかける。廊下の奥からとたとたと、生きた人間の歩く音がして、トントンは部屋の入り口を見る。 「みてみて、今日の収穫。キャベツや人参が大きくなってきたよ」 嬉しそうな声をあげて入ってきたのは、自分の農園で毎日土いじりを楽しんでいるひとらんらんだ。まだ土まみれの収穫したての野菜が入った大きな籠を抱えている。ミヨイクニで忌避された存在と言われ恐れられていた鬼の子の正体は、動植物を愛する優しい心と正義感の持ち主であった。話してみないと解らないものだなぁと、トントンは顔を綻ばせる。 「すごいわ、こんなに育つなんて。真っ赤で美味しそうな人参やね」 「うん。冬は寒さで身がしっかりしてるから、きっと甘く出来てるよ。生でも食べられる自信作」 ひとらんらんは台所に籠を置き、うーんと言いながら腰を伸ばす。その様子を見て、ひっついてコネシマの体温を奪っていたオスマンが、ひとらんらんの側へふわりと浮遊する。 「おかえり、らんらん! お疲れ様〜」 「あ、マンちゃん! ただいま」 二人はつい最近心を通わせ合い、互いの記憶も交換したようだ。二人の雰囲気はとても似ており、ふんわりとした優しい空気がその場に流れる。まるで春の女神の祝福を受けたような二人を尻目に、ショッピに煽られ吠えるコネシマの声が響き渡る。その様子はまるで火炎と氷河のぶつかり合いだ。しかしながらトントンはコネシマから、彼がショッピと深層の記憶を交わしあった事を聞いていた。深層の記憶を交わすという事は、死者が生者を心より受け入れ、赦しを与えねば出来ぬこと……その割にはその後も表面上の関係性は変わっていないようだが、これが二人の不変の関係なのだろう。
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