夏の終わり
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「相変わらず美味かったで。イフリートもきっと庭でご主人の帰りを待っとるやろし、風呂もあんで。今日冷えとるからたまらんやろ」 「最高っすね!」 泥で汚れた靴をポイッと脱ぎ捨てて、ゾムは嬉しそうに廊下の奥へと消えていった。その背を見送った鬱は、肩を竦めて二階へ上がる。その顔からは表情が剥がれ落ちる。自分は誰かに心を開く事など、出来る日が来るのだろうか……こんな自分を受け入れる人間など、いるのだろうか。絆を結んだ者同士は、毎晩どのように過ごしているのだろう。それを密かに覗くなんて、惨めになりそうで真っ平ごめんだった。自室の扉の前へ立ち、足元に目を落とす。自分の落としている影が、闇を手招いている。 「さぁ、今日もお仕事やで、僕」 そう呟くと、鬱は煙草を取り出して1本咥え、自室へと足を踏み入れた。 風呂上りの火照った体を、廊下の冷気が一気に冷まし、ぶるりとひとつ身震いをする。白い息を吐きながら、トントンはまだ半分乾かない髪の毛をわしゃわしゃとタオルで拭き、キッチンの方へと足を向ける。彼は首の傷を見せたくない為、いつも風呂は一番最後だ。屋敷はしんと静まっており、きっと大半は自室へ戻って寛いだり、パートナーと共に過ごしたりしているのだろう。リビングへと入ると、椅子に座って目を閉じてうとつく恋人の姿を見つけ、そっと側に寄った。 微かな寝息が聞こえてくる。基本死者は眠りを欲さない。なのにグルッペンやここにいる他の死者は、生者と共に過ごす時間が増え、生前の記憶をなぞらえて過ごしているせいか、基本的に生きた人間と同じような感覚になっているのだと、博識なエーミールが言っていた。何故そんなことが彼に解るのかは謎であったが、彼に付きまとう本から出てきたという“神”の存在が頭をよぎる。 うつらうつらしているグルッペンの肩に手を置くと、彼は長いまつ毛の間から、灰色の瞳を覗かせる。 「いつの間にか眠っていたようだ……」 「もしかして、俺を待ってたんですか?」 「ああ、そうだぞ。中々出てこないから眠気にやられるところだったぞトン氏」 優しい笑みと、誤魔化されることのない言葉。彼は嘘の言えない人間だった。椅子を引いて、グルッペンを立たせてやれば、彼は大きなあくびをして目をこすった。
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