夏の終わり
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「なんだって、押し返された……?」 タミアラ領の戦陣で、驚きの声があがる、ここ数カ月拮抗していた戦力が、徐々に崩れているらしい。しかし作戦を見直しても、相手の戦力投下の数を見ても、そう変化はない。なのに、今まで事実上の勝利をおさめていた自軍が負け始めている。 「何故だ」 「それが……“赤い翼”が、北方の戦線から引き抜かれ、一個師団と共に配属されたとの噂があります」 たったのそれっぽっちの戦力で、戦況を変える力を持つこの統率者を、タミアラ国では“戦域の赤い翼”と呼び、畏怖していた。彼は8年程前に、突如闇夜に紛れて自国タミアラから亡命し、ミヨイクニに寝返った成り上がり者であった。その戦いぶりは近年殊更に凄まじく、一度相対すれば生きては戻れないとまで言われ、その二つ名はトレードマークである長いマフラーが振るわれた剣と共に舞う様が、まるで背に生えた大きな翼のように見えるために付けられた。 「何故今になってここに赤い翼が……」 「あれは悪魔の化身だ、あの裏切者が恩を忘れて!」 「彼を絡めとるには、一度戦線をひきなおした方がよろしいのでは」 「狼狽えるな!」 凛としたバリトンの声が、テントに響く。簡素な剥き出しのランプに照らされたそのアッシュブロンドと、世界でも美しいと名高い灰色の瞳を持った男、グルッペン・フューラーは、側近たちのどよめきを一括し、鎮める。 「相手は悪魔でも、化け物でもない、人間だ。俺たちと同じ人間だ。何を畏れる事がある」 「あの赤い瞳を見れば、グルッペン少将も、お解りになるでしょう」 「フッ……フフフフ、ハハハ!」 赤い瞳……それを聞いて、黒い軍服に身を包んだ細身の男は一笑に付した。 「いいか、悪魔なんてものは虚像だ。それを作り出すのは己の心。恐れるな。相手は、人間だ」 グルッペンの言葉には説得力があり、静かな中にも確固たる自信と信念が感じられる。人を引き付ける美しい容貌に、威厳のある佇まい。フューラー家はまさに多くの猛将を輩出してきたエリート中のエリートだ。その血を受け継いで見事この地位まで上り詰めたまだ若き軍師は、この辛い戦線を維持するための、皆の心の砦であった。 しかし、当のグルッペンの心の中は、荒れ狂っていた。
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