夏の終わり
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気怠い呟きを耳にするものは側にはいない、そう思っていた。深夜の昔作られた石の監視塔……しかも冬の寒さ厳しい中、誰もこのような場所には足を延ばさないだろう。そう思っていた。 「そんな都合のいいヤツおらんやろ!」 「マ!?」 側から聞こえてきたでかい声にビクリと間抜けな声で驚きながら肩を大きく跳ねた。鬱は大げさな動作で振り返る。そこにはタミアラ国の冬季軍服に身を包んだ、意志の強い綺麗な空色の目をした快活な男が立っていた。いかにも西方の出身と思わせる金色の短い髪と整った顔立ちは、自信に満ち溢れている。その顔には見覚えがあり、この戦線を力づくで押し上げた功労者であるタミアラ国陸軍のコネシマという男であった。鬱は彼の襟に付けられていた階級章を見て、少しホッとした。自分と同じ、少尉であった。 「なんでお前こんなところに居るんや、スパイやと思われたらどないすんねん」 「休憩中ですよぉ〜、これです、これ」 コネシマの問いかけに、ポケットに突っ込んでクシャクシャになった煙草のソフトケースを見せ、気怠げに返答する。これは鬱の処世術だった。自分を大きく強く見せれば、どこかで足元を掬われる。男の世界の嫉妬というものは、思ったよりも熾烈を極めるのだ。だからなるべく自分を小物のように見せる癖がついていた。これが女相手ならば話は違うが、そこは割愛させていただく。 「おぉ、煙草かぁ! なら俺にも一本くれや」 このコネシマという軍人はなかなか話が解るやつであった。彼も愛煙家らしく、煙草を咥えると火をつけ、肺活量の少ない鬱とは比べ物にならない程の煙を吐いては幸せそうに低い声で唸った。 「あー、久々やわー。最近は物資にも余裕がなくて、嗜好品から削られてくねん。こんなに気前よう分けてくれるとは思っとらんかったわ。サンキューな」 「さいで、ほんなら良かったわ」 「あー生き返るんじゃー」 互いに軽く自己紹介をして、暫し雑談に花が咲いた。二人はまるで旧友のように親しげに話した。鬱は、頭の固い制服野郎にもこんなに柔軟な奴がいるとはと、何か掘り出し物をしたような気分で嬉しくなった。
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