夏の終わり
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『if 誉高き知将は灰を被る』 「トントン、今日は野菜のスープだぞ」 あぁ、まただ。 「今日はおじさんの不動産屋で手伝えることになったんだ。お金、いっぱいもらえるよう頑張るな」 この子が何もないところに話しかけるようになったのはいつからだったか。捕虜から帰ってきた時、ミヨイの軍服を着て汚い小さなカバンと軍刀を提げて我が家に来た時は驚いた。思わず、抱きしめてしまったが、彼は力なく笑うだけだった。離れれば、何かを掴むような仕草をして何かを私の前に連れてくると、こう言った。 「トントンも帰ってきたんだ。いいですかね、おじさん」 トントン君がいるかのような口調だった。彼が見ている空間に目を向けてもやはり誰もいない。一旦、家の中へ上げたが、その後も何もない隣の空間に話しかけて時々幸せそうに力なく笑っていた。その時は、家に泊めたが布団もきっちり二枚敷かれていた。 そんな側から見れば異常な彼をどうするか、次期当主となるアーベルに話した。アーベルは野原に咲く小さな花のように優しく、恩はしっかり返さないとなんて言って、私が死んだ後も回復するまで引き取ってくれるようだ。私はしみじみ、いい息子を持ったと心から思った。 後日、何日か私の家に暮らさせたが、トントン君の分のご飯が用意されてないと、自分のパンを全部あげ、彼は帰ってきた時より酷く痩せていった。私の娘であるエヴァはそんな姿を悲しそうな不満そうな顔で見ていた。それもそのはず、幼少期の彼も士官学校時代の彼も軍属し活躍していた彼ももう何処にもいないのだから。そこに居るのは、一生懸命生きていたのにやがて人に踏み潰されてしまった植物のように酷く病んでいる彼だった。
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