夏の終わり
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「……おじさん」 バイト帰りに彼が私の家に訪ねてきた。うちに来るのは久しぶりだったので、とても嬉しかったが彼の表情はとても暗かった。 「あの、あそこのバイト……やめたいんですが……」 「え?どうしてだい?」 申し訳なさそうに彼が眉を下げながらそう告げる。 「男のお客さんとか……その、女のお客さんにも体を触られて、とても気持ち悪いんです……」 「そ、そうなのかい?でも、確か高校生の子もいたよね?」 「あの子には、誰も……」 「うーん……」 きっと、年齢で判断されているのだろう。17、18の子に手を出したら犯罪になる。だけど、彼はもう40手前だ。40歳、しかもこんなに端正な美貌を持っている。触っても犯罪にはならない。辞めてしまってもいいのだが、雇ってくれると言ったのはあのカフェだけだ。 「もう少し頑張らないかい?ほら、前から生活費溜めてたじゃないか。何か欲しいものがあるんだろう?」 「!……うん、欲しいもの。あります……もう少し頑張ってみます」 にこっと少しだけ口角を上げるとそう言って、私の家から去っていく。欲しいものがあるなんて嬉しい、何かは分からないがとても大切なものなのだろう。
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