夏の終わり
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しかしそんな安息の時間もすぐ終わってしまう。 コンコン、と響いたノックの音で彼が呼び出される。 仮にも彼の部屋、軍の人間が出入りするのもおかしくはない、そっと寝そべり直して会話に聞き耳を立てた。 「今、激戦区と化しているA-2-4地区へ足を運んでほしい」 …どうやら彼はまた戦に駆り出されたらしい。 しかも危険な場所。 足手まといは快復するまでついていくことすらできない。 物思いに耽っていると会話が終わったのか彼が不意に扉を閉めた。 扉を音をたてて閉まると悔しそうな顔をした彼は傍により、自身の首にネックレスをかけた。 彼のドックタグだ。 「…ええん?お前のやぞ、ロゼット。」 首をかしげて問いかけては、彼の顔を見やる。 「良いのさ、帰ってくる意味になってはくれないのかい?」 冗談交じりに笑いながら、しかし辛そうな表情のまま言って今度は手記を手渡した。 彼は筆まめで、戦や遠征など数十日や数ヶ月、大きく期間を開けてでもその手記を更新し続けてきていた。 きっと彼は帰ってきた時に自身を目印にしてこの手記をつけるのだ。 ニッと笑って受け取れば、ひらりと手を振った。 「行ってらっしゃい、帰ってきてや?…ちゃんと」 寂しそうに笑みを浮かべたのを悟られぬよう、くすりと笑い直す。 そして自身の分と、彼の分のドックタグを手に握り、胸に押し付け抱いた。 その二つがかかった首は大層重く感じるが、彼の命の重みだと思うと何故だが頬が綻んだ。 彼は笑って頷いて、戦支度を整えてひらりと手を振った。 「それじゃ、行ってくるよ。…じゃあ、」 2人の笑い声がその部屋から消えると、静寂のみが残り、それは次第に心を蝕んだ。 不安、絶望、彼のいない現実はなんとも空白で虚しいものだろう。 それを払拭するものはなく、逃れるためにそっと布団に潜り静かにまた涙を流した。 彼の優しさに酔いしれながら流す涙は彼が無事に戻って欲しいと祈願したものでもあった。
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