夏の終わり
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ゆらゆら、と揺れて、震えて、力が抜けそうな脚を必死に前へと動かす。 はくはく、と荒く、浅くなる息を潜め、周りに自分がいることをバレないようにする。 ちかちか、と目を閉じれば白く点滅して、目を開けては暗くなって霞む視界を地面に向け、覚束無い足をただじいっと見つめる。 ぐらぐら、と落としてしまいそうになる頭を必死に上げる。…あぁ、落としてしまいそう、というのは言葉の綾だ。要するに重い、ということ。 異常だらけのこの身体で、今向かっているのはどこなのだろう。自分の国?それとも戦場?もしかして相手国?…行ってみたい気持ちはある。任務でしか行かないから。 行き先なんて分からないまま、倒れそうな身体を揺らして目立たない道を歩く。この道は…見覚えがある。けど、何処へ向かう道かは思い出せない。…いや、知らないかもしれない…? ここで、思考が着々と鈍くなっているのがわかった。それと、記憶も曖昧になっていることも。 ふと、鈍い思考で疑問が浮かぶ。 …なんで、こうなったんだっけ、? そう思いつけば、ピタリと足は止まる。震えて力が抜けそう、という表現が似合うその足は、止まってもなお同じだった。 ぼーっとしながら地面を見つめるその視線は、ゆっくりと左手を見る。 …そこに、左手などなかった。代わりにあるのは、千切れた袖先と見える肉と骨、そこから垂れる血が見えた。 …あぁ、痛みも感じないのか。終わったなぁ。 ゆっくりと、鈍いその頭で過去を振り返る。 今日は、任務だった。暗殺も含め、その場所から情報を抜き出してこい、という簡単な任務。
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