夏の終わり
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『コハブの希望たち』 戦場では個の力よりも多くの勢力が物を云う事は確かだが、生き残りを賭けた戦いになればまた違う。純然たる命の遣り取りは時として別の結果を生み出すこともあるのだ。 彼の記憶の中の父は、小銃を背に掲げたまま吹雪の中家から出ていく姿を目にしたのが最後であった。それからすぐに北方で紛争が起こり、父は死んだと聞かされた。父の死後、悲嘆に暮れる母に連れられて行った場所は、ゲリラ達の共同生活スペースだった。親に連れられてやってきた他の同じ年頃の子とは、一緒に遊んだりして、貧しく厳しい暮らしの中でも楽しかった記憶がある。 母は敵国ミヨイの戦車へ、爆弾を抱え走ったところを射殺された。十歳になったばかりの少年は天涯孤独となったが、ゲリラの仲間達は彼を優しく、皆で育ててくれた。集落の小さな広場に駆けて行けば、いつもの笑顔が出迎えてくれた。 「ゾム、今日は何して遊ぶ?」 一番の親友であるユミトが、石を積み上げただけの井戸の上に座って待っていた。痩せた身体はすらりとした手足を一層際立たせ、クールな顔がニコリと笑った時に見える細い月のような目が印象的だった。 「んふふ、何がええかなあ。ユミトかくれんぼ弱いしなあ」 「お前が強すぎるんじゃないのか? でもレスリングは俺の方が強かったしな!」 ゾムと呼ばれた少年に向かって、ユミトは白い歯を見せた。その笑顔につられてゾムもニッと八重歯を見せながら、彼の隣に座る。彼との遊びは、周囲のゲリラ達の戦いを模倣したものが多かった。ここにいる子供たちはいつも、戦いが身近にある。 「そういえばこの間、ええもん手に入れたんよ。見てこれ」 ユミトが裾がボロボロになったズボンのポケットからキラキラとしたガラスの小瓶を取り出した。そのガラス瓶にはさらさらとした砂が入っている。二人でその砂をじっと眺めていれば、ゾムはスフェーンの様な瞳を丸くして、うわぁと声を上げた。 「星形や!」 「うん、砂だけど星の形してるんだよ」 「こんなんどこで手に入れたん!?」 「この間ミヨイの方から逃げて来た、タミアラ人の移民が分けてくれたんだ。俺たちコハブの血族にピッタリやろ? ゾムにも分けてあげる」
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