夏の終わり
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提示された報酬を聞き、目の覚めるような面持ちになったゾムは、くるくると回していたカランビットナイフをパシリと手に収め、はしたなくテーブルに乗せた脚を下ろしてから神妙な顔で、マジ? と隊長に一言問うた。たった一人の首を狙うには、それほど破格な高値の依頼だった。 「この間の少将の首五つ分って、まさか大将殺って来いとかそういう特攻みたいなんなら、僕は御免やで」 「相手はつい最近陸上師団参謀長に昇進したばかりの、大佐だ」 「は……?」 佐官クラスならそこそこの報酬は出るが、それでも提示された金額の足元には及ばなかった。 「そんなに特殊な奴なんか?」 「ゾム、お前は今幾つだ?」 「十八になった所やで」 「そうか。相手は大佐という階級を持ちながらも、たったの三十歳だ。どうだ、驚いただろう」 美しい色の虹彩を持つ瞳が驚きで丸くなるのを見て、部隊長はまだ成人もしていない目の前の一暗殺者の肩に手を置いた。 「どんなコネがあったらそんな異例の昇進ができるんや。そんなエリート街道まっしぐらのボンボンに、そこまで報酬が出るってのは……もしかして生け捕りとか?」 ゾムが頼まれて一番嫌な依頼は生け捕りであった。命がある状態で連れ帰るのは非常に骨が折れる。それよりも喉を掻っ切って混乱に乗じて逃げ切る方が性に合っていたし、気分もスッキリとした。だが部隊長は喉奥で笑って彼の肩から手を離した。そんな普段と違う様子に、怪訝な顔になってしまう。 「彼はエリートでも、ボンボンでもない。タミアラ山間の農村の出身であり、元タミアラ陸軍少佐だった男だ」 「……戦域の、赤い翼!」 ゾムは全身の血が一気に頭へ上るような感覚に、椅子を倒すような勢いで立ち上がった。わなわなと身体が震え、その男の事を考えると怒りが抑えられなかった。少佐のミヨイクニへの亡命は、タミアラ国全土を震撼させたのだ。現陸軍少将であるグルッペン・フューラーが逃亡の現場に遭遇し、鍔迫り合いになり傷を負わせたが致命傷までは至らず、その場での処罰をかいくぐりそのまま一夜にしてミヨイへと寝返ったと言われている。あの裏切りの後、内部情報を暴かれたタミアラは一気に劣勢になった。日毎激化する闘争にコハブの血族の仲間も沢山命を落とした。いい奴らだったのに。
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