夏の終わり
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二日前より降り続いている雨には感謝した。これで余計な匂いも足音も、この雨が消してくれる。地面はぬかるんでいるが川へ逃げれば後は追えまい。早朝三時に町を出て、一時間半もすれば敵の戦陣を見下ろせる丘の上へと身を潜める。眼下には大きな川が緩やかなカーブを描き、月の明かりはその流れにゆらゆらと揺れている。単眼鏡を片手に、仲間が場所を指さした。 「二時の方向にある茂みに移動すれば、敵の動きは丸見えだ。俺たちはこっち側で待機して動きを見、指示を出す。ターゲットを発見したらすぐにそっちへ伝える」 「ああ、頼むわ。しかし……一見してもようわからん造りにしとるんやねミヨイの陣地は。あんなん見たことないわ」 「そうだな、確かに……あれでは進攻するにも守るにもあまり効果的とは思えないが、何を警戒しているんだろう?」 一帯陣地に見えなくもないが、あまり多重構造にも見えず、ぱっと見砲撃出来る装備が少ない。奥側には大きな切り立った崖が見えるが、こちら側からではそこがどうなっているのかは確認できなかった。しかしあんな狭い場所で戦えば、敵味方共に多くの死者を出すだろう。一体誰の指示であのような中途半端な陣地を組んでいるのだろうとゾムは首を傾げる。 「まあええわ、こっちの仕事がそれで楽になるなら。成り上がりとはいえ、ぬるい世界で生きてきたヤツなんかに、俺が負けるわけないやろ。とにかく待っててや、すぐ潜入して相手の首とってきたる」 「ああ、頼んだぞ。お前が頼りだ」 仲間からの激励を受け、その若い暗殺者は音も立てずにサッと敵地へと侵入した。その姿はまるで野生動物の様にしなやかに、体躯はあますところなく使いこまれ徹底的に無駄が省かれている。雨の中陰から陰へと慎重に移動し、当初想定していた茂みへと身を潜める。その場所はこのミヨイの陣地が一望でき、ゾムは満足した表情を浮かべた。地面の砂を手ですくい、自分の衣服にかぶせて、その土の中へと半分身を滑り込ませる。口元をシュマグで覆い隠しその時が来るまでじっとそこで息をひそめる。物音一つさせてはならないこんな時、ゾムは目を閉じて、まだ父がおり母がいた、あの幸せだった頃に聞いたオルゴールの音色を思い出す。
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