夏の終わり
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父が戦場へ行くときに持っていた銀色の十字のお守りがその持ち主の姿なく、訪ねてきた軍人の手によって自分たちの家へと還ってきた時、母は壊れたのではないかと思う位に叫び続けた。今、自分の胸元にはいつも、その銀の十字がかけられている。その十字を握りしめたい気持ちにはなるが、今は息すらも殺している状態だ。身動きは取れない。 静かな雨の音が自分やこの地を包んでいた。近くで微かな布のこすれる音がして、まるで祈りを捧げるかのような面持ちでゾムはゆっくりと目を開けた。いつの間にか周囲は明るくなっており、数時間過ぎていたようだ。十数メートル奥の小さなテントの中から一人の男が姿を現した。自分よりもはるかに背の高いその男の首元を見、ゾムは僅かに眉を動かした。首を横に走る大きな裂け傷が、その男の潜ってきた修羅場を物語っていた。ミヨイ国のオリーブグリーン色の軍服にはシワひとつなく、腰に帯刀した曲刀は持ち手の細工が使い古されて削られ、鈍色を放っている。その両眼は血の色そのもので、ゾッとするような美しさを放っている。 一目でその男が、タミアラ国の大敵であり、今回のターゲットだと理解できた。相手との距離は十数メートルだが、周囲に他にどれほどの人間がいるのかが解らない。今すぐに躍り掛かりたい衝動に耐えながら、彼の動きを目だけで追う。彼の目の色と同じ色のマフラーが首の傷を隠すように巻かれ、無防備に背中を見せながら井戸水を汲み上げた桶から水を飲み喉を潤している。一人きりで隙だらけだ。しかもパッと見た感じでは、ただ力があり大きいだけでそう怖ろしい相手でもなさそうに見える。大きく愚鈍な相手をスピードで蹂躙するのは慣れていた。今なら後ろから……しかしここでゾムは自分の腕が震えているのに気付いた。久しくなかったこの感覚は、武者震いだ。どうしてこんな時にと眉を顰める。味方の合図はまだないが、自ら通信を切り、自分の勘とこの身体能力に賭ける。
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