夏の終わり
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「あ、ロボロ……軍人やったん、よね。俺も、同じ」 「敵軍やったけどな。でも、もう一旦終わったんやし、今は関係ないかな?」 ロボロは珍しく彼が会話をしようとしてくれているのを、刺激しないようにくすりと笑い、物腰柔らかに相槌を打ちながら聞いた。ロボロ自身、自分の上っ面の物腰の良さには多少自信があった。その甲斐あってか、ゾムはぽつりぽつりと自分の中で見つけられた言葉を、一言ずつ押し出すように並べていく。 「あんな、俺……こ、後悔してんねん、めっちゃ……」 「うん」 「お、お……俺、やから、幽霊との方が、気ぃ、合うん」 「ようわからんけど、ゾムさんが気楽になれるんやったら、俺で良ければ聞くから何でも言うてや」 面紙の下でまるで無垢な子供のように笑うと、それに安心したのか、ゾムの口元が緩み特徴的な八重歯が覗いた。 「もーホンマ、やっとれんわぁ……」 ひとり呟いた脱力感満載な声は、空へと浮かぶ紫煙に便乗し、そのまま夏の青色へと溶け込んだ。抜けるような夏の空色には溶け込めぬのは、屋根に寝そべっている自らの藍色だけではあるまい。だけど今は自分一人だけがこの世界からぷかりと浮いているような気持ちで満たされている。鬱はこうしている時間が嫌いで、少しだけ好きだった。 「僕元々そんな面倒見いいほうちゃうんやけどなぁ、しゃーないな。あんな顔するんやもん」 誰が聞くでもないそんな独り言は、受け止める人間はいない。鬱は目を閉じる。彼は数日前闇市で“死の欠片”と呼ばれる青い小瓶を手にし、感情の麻痺したような顔で笑った赤い瞳を忘れられなかった。そんな彼、トントンは特に変わった様子もなく、うまく日常に溶け込んでいる。そこに違和感は何もない。しかし人心掌握や諜報に長けた鬱には、それが得体のしれぬ嫌な匂いを感知できた。これはもはや、長年の勘でしかなかったが。普通なら放っておくところだった。しかし、彼は自分の前で自分の非を認め、手を差し伸べてくれた人間の一人だ。
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