「地上に自軍の歩兵がいたら、機銃掃射なんか、できないじゃないっすか」 チッと舌打ちをして、その戦線へと一直線に飛び続ける。だがその時ショッピが耳を疑うような指令が飛び込んできた。『師団は壊滅寸前、機銃掃射を許可』「……了」 口では了解したが、顔はどんどんと険しくなっていく。もうすぐその現場へと到達するため、機体を横に倒して一気に急降下し、高度を落とす。下には両国の多くの戦車が連なり、銃撃戦を繰り広げている兵士たちの姿が見えた。確かにタミアラ国は劣勢で、戦力も圧倒的にミヨイが上であった。ショッピはその戦況を見極めようと、その天性の瞳でじっと蟻一匹を逃さぬような程精密に見つめ続ける。ミヨイ軍の奥に、赤く長いものがたなびいているのが見え、それが敵の智将の身に纏っているものである事に気付いた。相手も自分達に気付いており、彼は瞬時に何かを指示し始め、命令の届く範囲から進攻を制止して即座に遮蔽物の多い退路を行く。ショッピは目を細め、その相手に敬意を払う。「あの軍師の察しの良さ、判断力の高さは本物っすね。彼を潰せれば、戦況は……」 しかし、その時目の横を掠めた人間が、ショッピ機械のような冷静さを大きく乱す。ブロンドの髪、必死になって怒号をあげながら、最前線で猛攻を防いでいるあの姿は、見間違えることのない昔のバディ、コネシマだ。「あッ……あの人、は」 言葉に詰まり、一度大きく旋回して機体を戻すと、異常を察した他の数機からの通信が鳴りやまない。操縦桿を握る手が震え、撃ち込めなかった。自分は彼にまだ、あの借りを返していない。ぐるぐると、悪いものが脳に渦巻きはじめ、怖ろしさに血の気が引く。彼が死んだら、彼を殺したら。自分を真っすぐ見つめるあの夏の青空のような瞳を思い出し、ショッピはハッと自分を取り戻して他の機体をさがらせた。
「地上に自軍の歩兵がいたら、機銃掃射なんか、できないじゃないっすか」
チッと舌打ちをして、その戦線へと一直線に飛び続ける。だがその時ショッピが耳を疑うような指令が飛び込んできた。
『師団は壊滅寸前、機銃掃射を許可』
「……了」
口では了解したが、顔はどんどんと険しくなっていく。もうすぐその現場へと到達するため、機体を横に倒して一気に急降下し、高度を落とす。下には両国の多くの戦車が連なり、銃撃戦を繰り広げている兵士たちの姿が見えた。確かにタミアラ国は劣勢で、戦力も圧倒的にミヨイが上であった。ショッピはその戦況を見極めようと、その天性の瞳でじっと蟻一匹を逃さぬような程精密に見つめ続ける。ミヨイ軍の奥に、赤く長いものがたなびいているのが見え、それが敵の智将の身に纏っているものである事に気付いた。相手も自分達に気付いており、彼は瞬時に何かを指示し始め、命令の届く範囲から進攻を制止して即座に遮蔽物の多い退路を行く。ショッピは目を細め、その相手に敬意を払う。
「あの軍師の察しの良さ、判断力の高さは本物っすね。彼を潰せれば、戦況は……」
しかし、その時目の横を掠めた人間が、ショッピ機械のような冷静さを大きく乱す。ブロンドの髪、必死になって怒号をあげながら、最前線で猛攻を防いでいるあの姿は、見間違えることのない昔のバディ、コネシマだ。
「あッ……あの人、は」
言葉に詰まり、一度大きく旋回して機体を戻すと、異常を察した他の数機からの通信が鳴りやまない。操縦桿を握る手が震え、撃ち込めなかった。自分は彼にまだ、あの借りを返していない。ぐるぐると、悪いものが脳に渦巻きはじめ、怖ろしさに血の気が引く。彼が死んだら、彼を殺したら。自分を真っすぐ見つめるあの夏の青空のような瞳を思い出し、ショッピはハッと自分を取り戻して他の機体をさがらせた。