夏の終わり

ソロル部屋

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1名無しさん???v 2018/09/01 15:27 ?d?b3PC Android

そろる貼ってね(ニッコリ)

2ナイ???v 2018/09/01 20:23 ?d?b3PC PC

『彼らの日常』

 障子越しに差し込む柔らかい光の中、トントンはどこか懐かしさの漂う青黒檀の手すりについた傷の一つ一つを掌で確かめながら、微かにギィギィと軋む階段を静かに上がる。ここはグルッペン・フューラーの所有する家である。いや、所有するというのは多少語弊がある、というのも彼は先の戦争でその命を散らせてしまった。皮肉なことに彼が亡くなったという一報を、自らが裏切った祖国“タミアラ国”の将官より告げられた。彼の死を聞き呆然とする自分に向かい、タミアラ国の将官が鉄格子の向こうから言い放った言葉は今でも忘れられない。

『折角祖国を裏切ってまで仕官したミヨイ国は、もうお前を必要としないとの事だ。祖国を捨てた男が、異国に捨てられる……役立たずの裏切者にはピッタリの末路だな、ミヨイ国の師団参謀長殿』

 顔を上げれば流麗なる欄間が目に留まり、階段の途中で足を止めてその美しいミヨイ国独特の彫刻を眺める。見事だ、とは思えどそれ以上の感想は特に抱かない。小さく息をついて階段を上がり切ると、廊下の向こうからバタバタと騒がしい音がして、まるで弾ける様な鮮烈さでいくつかのが聞こえてくる。
「何で二人して俺の眠りの邪魔すんねん!」
「邪魔なんかしてないめうー、だってだってシャオさんが〜」
「あ? なんや、やるんかクソチワワ。寝坊する方がいけないんやで」
「なんやとこのクソ平均化野郎! お前、おまえ〜……そんなん言うんやったらやったるぞ!?」
「私の為に争うのはやめて〜」
「別にお前の為ちゃうわ!」
「そうだよ」
 三人…いや、口汚く罵りあう二人と、その間を愉しそうに漂う1人の“幽霊”。その幽霊と男二人は、ごく自然に言葉を交わしあっており、こんな奇妙な光景が、この屋敷では日常茶飯事である。ドタバタと廊下を突き進みみながら騒いでいた二人は、階段の前に立っているトントンに気付いて一瞬ギョッとしたような表情で歩みを鈍らせる。幽霊の方はおっとりとした口調と笑顔で、トントンに話しかける。
「おはようトントン〜」

3ナイ???v 2018/09/01 20:24 ?d?b3PC PC

「おはよう、オスマン。朝ごはんができとるから、寝坊しているであろうコネシマを起こしに行こうと思っていたところや。まぁ、先に起こしに行ってくれたみたいやけどな」
 挨拶を返しながら、ニット帽をかぶったオーバーオールの青年に目を移すと、ふわりと宙を漂うオスマンも、優雅な仕草で二人の方を向き口元に手を当てて妖艶に微笑む。オーバーオールの青年シャオロンは、野に咲く野草のような明るい笑みで応じる。
「せやで、起こしたったんねん。感謝せぇよ」
「やかましい! 起こされんでもあの1分後には起きとったわ。いや〜勝ちましたわ」
 煽る様にいじる彼に向かって、鮮やかな青い目をした金髪の男コネシマが腕組みをしてなぜか自分を納得させるかのように、力強くうんうんと頷いている。これは完全に彼の癖であり、よく見かける光景であった。
「まぁトントンに起こされるよりはよかったか……」
「どういう意味やねん」
 コネシマの呟きが耳に入り、今日初めて表情を緩ませる。彼らとの生活は、戦時中に凍てついたトントンの心の鎖を着実に溶かしていた。

「ようやく起きてきたかお前達」
 一階の大広間に入ると、そこには既に数人が集まっていた。声をかけてきたのは、この屋敷の主であるグルッペンだ。彼は自分のコレクションである拳銃を磨き上げ、その鈍色の輝きを光に当てて楽しんでいるようであった。その側では彼の武器を手入れする手元を見ていた元空軍の若者であるショッピが、コネシマを見て露骨に嫌な顔をする。まだ若いが彼も戦死しており、その体は日の光を透かしている。
「げ……もう起きてきたんすか。もう寝てたらいいのに、一生」
「なんやお前!? 俺もできるならそうするわ!」
 挨拶より前に彼らは軽口をたたきあう。それが彼らの挨拶のようであった。それを側で聞いていたグルッペンがかくも楽しそうに喉の奥で笑い、一人先に席についてムシャムシャと朝食を頬張り始めたコネシマを見て、トントンは眉間に指をあててため息を吐いた。これが今の、彼らの日常だ。

4ナイ???v 2018/09/01 20:26 ?d?b3PC PC

「幽霊が見えるようになった瞬間って、どうやったん?」
 縁側に座った少年が問う。その姿は異様そのもので、“地”の文字が炭で入れられた、まるで死罪人を彷彿とさせるような面紙を括り付け、表情を完全に隠している。そんな少年が問うた相手は、あまり周囲に積極的に馴染もうとしない、黄緑色のパーカーを着た男であった。先刻ロボロが縁側に出たところ、見事雑草に紛れ込んでいた黄緑色の背中を見つけた。何をしているのかと思えば、彼は庭に座り込んで蟻の行列にパンくずをやっていたのだった。狙撃手として長年訓練を積んできたロボロは、戦争で利き目を失ったとはいえ、優秀な目をしていた。そんな彼も、任務遂行中に悲惨な死を遂げていた。
「……せやんね、ある日を境に、急に、かな」
 ロボロの問いかけに、背を丸めて地面を眺めたまま、黄緑色のパーカーを着た男、ゾムは答える。彼はあまり人と一緒にいるタイプではないらしく、殆どを一人で過ごしている。屋敷にはいる事もあれば、いないこともある。そのようにふらついている幽霊を知っていたロボロは、紺色のスーツと赤いネクタイ、気だるげにへらへらと笑うあの男を脳裏に思い浮かべていた。幽世に住まう幽霊は定位置にいないことが多いのは割とある事だが、目の前で背を丸めた男は、あの過酷な戦場を生き延びた強者であった。彼の体付きは普通の兵士よりも無駄がなく、野生動物のようにしなやかで、見る者が見れば彼が戦場でどれほどの脅威であったかを口にせずとも理解できる。
「ふーん、急にやったん。確かにある日を境に、よう気付かれるようになったんよね」
 相手の返答にそう返してやれば、ゾムは丸めた背中をのばし、まるで遠慮するようにゆっくりと振り返って、どこかひきつったような、しかし懸命に作った笑顔を向ける。
「そ、そうなん? えと、なんやっけ……名前」
「ロボロやで」

5ナイ???v 2018/09/01 20:27 ?d?b3PC PC

「あ、ロボロ……軍人やったん、よね。俺も、同じ」
「敵軍やったけどな。でも、もう一旦終わったんやし、今は関係ないかな?」
 ロボロは珍しく彼が会話をしようとしてくれているのを、刺激しないようにくすりと笑い、物腰柔らかに相槌を打ちながら聞いた。ロボロ自身、自分の上っ面の物腰の良さには多少自信があった。その甲斐あってか、ゾムはぽつりぽつりと自分の中で見つけられた言葉を、一言ずつ押し出すように並べていく。
「あんな、俺……こ、後悔してんねん、めっちゃ……」
「うん」
「お、お……俺、やから、幽霊との方が、気ぃ、合うん」
「ようわからんけど、ゾムさんが気楽になれるんやったら、俺で良ければ聞くから何でも言うてや」
 面紙の下でまるで無垢な子供のように笑うと、それに安心したのか、ゾムの口元が緩み特徴的な八重歯が覗いた。


「もーホンマ、やっとれんわぁ……」
 ひとり呟いた脱力感満載な声は、空へと浮かぶ紫煙に便乗し、そのまま夏の青色へと溶け込んだ。抜けるような夏の空色には溶け込めぬのは、屋根に寝そべっている自らの藍色だけではあるまい。だけど今は自分一人だけがこの世界からぷかりと浮いているような気持ちで満たされている。鬱はこうしている時間が嫌いで、少しだけ好きだった。
「僕元々そんな面倒見いいほうちゃうんやけどなぁ、しゃーないな。あんな顔するんやもん」
 誰が聞くでもないそんな独り言は、受け止める人間はいない。鬱は目を閉じる。彼は数日前闇市で“死の欠片”と呼ばれる青い小瓶を手にし、感情の麻痺したような顔で笑った赤い瞳を忘れられなかった。そんな彼、トントンは特に変わった様子もなく、うまく日常に溶け込んでいる。そこに違和感は何もない。しかし人心掌握や諜報に長けた鬱には、それが得体のしれぬ嫌な匂いを感知できた。これはもはや、長年の勘でしかなかったが。普通なら放っておくところだった。しかし、彼は自分の前で自分の非を認め、手を差し伸べてくれた人間の一人だ。

6ナイ???v 2018/09/01 20:28 ?d?b3PC PC

「は〜あぁ、ホンマにもう……死んでから後悔するとか、順番がちゃうやろホンッマ」
「何がちゃうねん? 大先生、来たで」
「お」
 大先生、と愛称で呼ばれた鬱は体を起こすと、うーんと背伸びをしてみせ、それが終わると自分が呼び出した男が屋根に登り自分の横に腰かけるのを静かに見ていた。あの和解の握手から、鬱とトントンは互いに疲れないのか、何気ない会話をしたりする機会が増えた。今ではお互いリラックスしながら接することができるまでになっており、その様子は最初の剣呑さからは想像もできない。
「俺、大先生が話したい事、大体予想ついてるで」
 しまった、先制されてしもた。人心掌握の鉄則である、自分が優位な状態を作り出す前に、トントンはたったの一言で自ら牽制をかけてきた。ホンマ強敵やなあと、苦笑いと共に鼻から紫煙が抜けていく。それでも気を取り直し、いつもの様に、にへらと笑う。
「じゃあ話早いわ、さすがトンち。じゃ、何でなん?」
 問いかけながら彼の顔を見ると、彼は瓦に後ろ手をついて、遠くの方を見つめている。限られた命を燃やすような蝉達の声が下界から聞こえ、彼のかけている眼鏡に、白い雲が流れていく。ジッと閉じられていた唇が薄く開き、肺に空気を取り込む音が微かに聞こえる。
「……大先生は、死んだあとにおらんかったん? また会いたいって思うような人」
「僕? うーん。せやなぁ……全くおらんかった訳ちゃうけど、まあよう知っての通り、こんなやし? 逆に僕に会いたい人間がおるかも定かではないわ」
 半分茶化しながら自虐を口にすると、この言葉の中から本当に汲んでほしい真意を見抜いたのか、それとも空気を読めない奴ととらえたのか、寂しさの混じる苦笑を浮かべた。
「グルッペンとは、いつからかは忘れたけど、少なくとも士官学校ではずっと一緒やった。とはいっても、彼は上官で俺は下士官やったから、訓練中はそない仲良う接するわけにもいかんかったけれど、それでも俺が祖国を裏切るまでは、俺は誰よりもグルッペンの側にいたはずなんや。婚約者も紹介してくれた。知っとった? あいつ婚約者がおったんよ」

7ナイ???v 2018/09/01 20:28 ?d?b3PC PC

「あぁね。グルちゃんたま〜に、惚気るからね。けっこ〜ええ女やったらしいで、僕が生きてたら紹介してもらおうかと思たけど、死んどるからね」
 いつもの女慣れアピールをしてみせれば、女性経験の少ない(もしくは全くないであろう)彼は、あからさまに不機嫌そうに眉の間にシワを寄せた。フェミニストでもないくせに、一々うるさいやっちゃと、肩を竦める。そういう真面目さが、彼のいいところでもあるのだ。
「グルさんが俺との思い出を、話してるの聞いたことあるか?」
 唐突に問いかけられたその言葉に、鬱は許容量の少ない肺一杯に、煙を吸い込みながら考える。自分が記憶してる限り、グルッペンがトントンの事を話している内容は、出会ってからの楽しい記憶だけで、昔の知り合いだった頃の話は一度も聞いていない。いやそれよりもそこまで一緒にいたのだったら、グルッペンとトントンの二人がもっと積もる話をしててもおかしくないのに、それを目撃したことが一度もない事の方が気にかかる。煙を吐き出しながら浮かんだ疑問を口にすると、トントンは少し驚いたように目を大きくし、すぐに再び遠くを見つめる。
「アイツな、俺に再会した時、俺の名前も思い出せんかってん。俺の事、丸々記憶からなくなっとるんよ。今の俺は、アイツにとって、なんとなく顔を知ってる程度の存在やねん」
「え……あの知将が忘れると思えへんけども。でも確かに、あの人ちょっと覚えてなさすぎやと思うわ、まぁ、そういう僕もハッキリ覚えてない事があんねんけど……自分の事棚に上げて言うけど」
 そう返せば、彼の黒い前髪が風に遊ばれ、彼の赤い目が細められる。
「せやから生前交した約束も、アイツ忘れてしもてん。俺と交した遠い誓いを、忘れとるんや」
 その声があまりにも寂しそうで、煙草を咥えようとした鬱の手が止まり、灰がぽとりと落ちる。トントンはそのまま言葉を繋ぐ。

8ナイ???v 2018/09/01 20:29 ?d?b3PC PC

「俺はどうしたいんか、自分でもよく解らんねん。彼に思い出させたいんか、それともこのまま幸せそうに笑っていて欲しいのか。あの青い瓶を手に取ったんは、そのためやねん。あ、安心してや、俺は自分であの青い瓶の中身を飲み干して死んだりせん。勿論誰かに使うつもりもない。そういう事に使うつもりはないんや。ただ、グルさんが俺との約束を、思い出してくれたらって」
 そこまで言うと、彼は体を横たえ、自分と同じように仰向けになって日光浴をする。目を閉じて深い深呼吸をするトントンは、これ以上詳しい事を話す気はなさそうだ。こんなに暑く、酷く肌を焼くような日差しなのに、赤いマフラーを巻いたままの彼の額には、当たり前のように玉のような汗が浮いている。鬱は止めていた手を再び動かし、フィルター越しに空気を吸い込む。呼吸とともにジリジリと、煙草の長さが減っていく。吸い込む度にだんだんと熱くなっていく煙を飲み下しながら、今は大切な人の記憶から取り残されて、この世に残った苦しい心情を吐露したトントンの側にただ居てやればいい。そう決めて、短くなった煙草をもみ消し、新しい煙草に火をつけた。

9調???v 2018/09/01 21:41 ?d?b3PC Android

明らかに毒々しいその空間は、自らが作り出してしまった闇市のある階層と似ているが、死神のようなロングローブに浮き足の鎌が徘徊しているのを見ると、そこのさらに下。四階層だろう。はて、一眠りする前は三階層に居たはずだ。更にいえば自身の店であったはずだったのだが。
「うー……ん、何やらかしたっけか」
確かにあの場所に迷い込む人間も増えた。それに合わせて上がる数値をもう二つほど自分は知っている。…売上と墜ちる人間、だ。さらに、前者が上がるほど後者も上がる。つまるところ、後者が増えすぎたのだろう。そのつけが管理者である自分に来た、というわけだろうか。あとは…あの死の欠片とかいう青いやつを分かりながら生者に売ったことだろうか?…いや、しかしそれは酷いだろう。商売は仕事なのだから。生を終えた自身の気晴らしのようなものだ、少しぐらいは自由も許して欲しい。



それから暫く、見慣れないこの場所を物珍しさにうろうろと歩き回る。一応魔具の剣を持っているが、売り物、は自分は使えない。代償にするものがないからだ。…ジェヴォーダンに対する一瞬の脅しになれば良い。普通は気付かれないように動くか、生者と行動を共にするか。アレを恐る死者はそうするだろう。しかし、自分はもう寧ろ自分が死のうが生きようがどうでもいいのだ。見つかろかろうが。
ふわふわ、とどこを行くまでもなく、現世と似もしない土地を歩く。気付かれただろうが、ぞくぞくと戦場を駆けた時の様に、殺気をピリピリと全身に感じる。思わず笑みを浮かべては振り返り、そのまま魔具片手に向き直る。でも何故だか、惹かれるようにふらふらとその浮いてるだけのローブに飛び込めば、紙外し、ふわりと微笑む。そして小さく、いいよ、と呟き鎌を首へと宛てがう。失くした右眼から漏れ出す障気のようなものが、首の切り傷から漏れだした。

10竹輪麩???v 2018/09/02 01:54 ?d?b3PC iPhone

ぼおっと血に汚れた地面を見ていた。雨が降ったばかりで湿っていて気持ち悪かったが、立ち上がれないほど体が重いから我慢する。寝そべっていても銃ぐらいは持てるのに、体に鉛でも鉄でも入ってるんじゃないかなんて疑うくらい、体はビクともしない。このまま、俺は死んでしまうのか。そう考えると走馬灯が脳内で流れ始める。幼少期の記憶、士官学校での記憶、軍人になってからの記憶が鮮明に思い出していく。草むらで遊んだり、ゲームしたり楽しかったなぁ……士官学校も辛かったけど、いっぱい褒められたなぁ……軍に入っていい功績が残せた、部下もたくさんいた……。あ、トントンもいた。トントンは……なんで、なんで裏切ったのだろう。一番、近くで見ていたはずなのに、俺の指示に問題があったんだろうか。嫌になったんだろうか。よくおやつを盗んでたからだろうか、もしかしたら、自分の隣が嫌だったのか。それとも、俺自身を嫌いになったのだろうか。先に婚約者ができてしまったことが気に食わなかったのだろうかなんて、彼が思ってもないようなことを考え続ける。どろりと、心に生暖かい液体がくすぐったくなるように撫でる。重い、何もかも重い。そういえば、ライラには申し訳ないことをした。約束を破ってしまった。生きて帰ったら結婚式をしようって言って指輪まで用意したのに、自分の嫁の晴れ姿も見れないなんて情けない。ライラ、トントン、どうか忘れて欲しい。こんなに地獄のような時間を生きずに忘れてくれ。俺は情けないやつだ。大切な人を二人も悲しませてしまうのは、情けない。……どうか、もし、神がいるのなら全部忘れさせてくれ。万が一、あの世で会っても何事もなくすれ違える関係にしてくれ。その方がきっと幸せだ。自分勝手な願いを許してくれ、こんな感情を苦しい感情を誰にも味わせたくない。どうかこんな感情を消してほしい……。あの狂いそうだった日々を、辛い記憶を消してくれ……自分勝手な俺を誰か許してほしい。
「すま……な……い……」
目の前が真っ暗になった。

11からすや???v 2018/09/02 21:16 ?d?b3PC iPhone

>>1…っ、はぁ、っく、ふ、はぁ…( 彼を追いかけようとして、走って、走って、走って。息苦しさも、吐き気も、寒気も、全部忘れて必死に追いかける。体力が尽きるとか、力を抜いたらもう立てないだとか、そんなの気にしないで走る。背丈が小さい彼は、自分達の為に頑張ってくれていた。赤の彼も、自分と同じ生者なのに、吐血をして、支えられながらも剣を持ち続けた。そんな彼を支えてくれていた彼も、最後まで戦ってくれた。…こうやって振り返ると、やっぱり自分は役立たずだ。ここまで付いてきてもらった、というのに自分は何もせず、ただ助けてもらうだけ。…嫌になるなぁ。…いや、考えるのはやめておこう。今は、目的を、達成させなければ。走って、辿り着いたのは…全く、見覚えのない場所。目の前にあった道を走り続けたのだ、ここが何処なのかなど分からないだろう。……その中に、一つ。人影が見えた。あの人影は、幾度も見てきた背中。自分の憧れでもあり、ライバルでもあり、親友でもあり、…幼馴染、という言葉が、一番ぴったりと嵌る、彼。あれは…探していた、 .)

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