『えみしんっ!』 密に群がる虫の種類などを書き記すペンの音の合間に聞こえた、甘い囀りの様な声。驚いて振り返れば、そこには自分を見つめ微笑んでいる、たわわな黒髪をもつ象牙の肌の女性がいた。ミヨイから来た女性だろうか……タミアラ国の人間よりも小柄な彼女は異国的な雰囲気を纏っていた。そう女性と接する機会のなかった自分でも解る、着飾っていなくとも美しい女性であることを。だが残念なことにその女性と自分は何らかの関係があるわけでもなく、ただポカンと口を開けて彼女の事を見つめていれば、相手のブラウンの瞳がきゅっと細められ、その様子を見て顔が熱くなる。「ごめんなさい、お邪魔するつもりはなかったのですけれど……」「えっ、いえあの、そんな」 エーミールは精一杯の作り笑顔を浮かべながら、そのミルクティ色のきちんと整えられた髪の毛をがしりと掻いた。180?近い自分よりも頭二つ分ぐらい背の低い彼女が、数歩離れた程度の距離で自分を見上げて優しく微笑んでいる。背の関係上仕方がないのだが、細やかなレースの付いた袖口の淡いピンクベージュのワンピースの胸元から、どうしても見えてしまう形の良い両のふくらみと谷間に目が行ってしまい、どぎまぎとして汗をかいた。「何をなされていらっしゃったのですか? あまりに真剣で、それが気になってしまって」「あぁ、昆虫観察です」 そう言ってエーミールは、自分の簡単なデッサンと虫の特徴や色、種類を書き記したお手製の図鑑を、数ページ程めくって見せた。こんな麗人に昆虫を見せたら嫌がられるのではないかと多少覚悟した。しかし彼女は図鑑を食い入るように見つめ、目をキラキラと輝かせた。「これ、ご自身で? まあ、すごい……! そこに蜜を塗って集めているのですね」
『えみしんっ!』
密に群がる虫の種類などを書き記すペンの音の合間に聞こえた、甘い囀りの様な声。驚いて振り返れば、そこには自分を見つめ微笑んでいる、たわわな黒髪をもつ象牙の肌の女性がいた。ミヨイから来た女性だろうか……タミアラ国の人間よりも小柄な彼女は異国的な雰囲気を纏っていた。そう女性と接する機会のなかった自分でも解る、着飾っていなくとも美しい女性であることを。だが残念なことにその女性と自分は何らかの関係があるわけでもなく、ただポカンと口を開けて彼女の事を見つめていれば、相手のブラウンの瞳がきゅっと細められ、その様子を見て顔が熱くなる。
「ごめんなさい、お邪魔するつもりはなかったのですけれど……」
「えっ、いえあの、そんな」
エーミールは精一杯の作り笑顔を浮かべながら、そのミルクティ色のきちんと整えられた髪の毛をがしりと掻いた。180?近い自分よりも頭二つ分ぐらい背の低い彼女が、数歩離れた程度の距離で自分を見上げて優しく微笑んでいる。背の関係上仕方がないのだが、細やかなレースの付いた袖口の淡いピンクベージュのワンピースの胸元から、どうしても見えてしまう形の良い両のふくらみと谷間に目が行ってしまい、どぎまぎとして汗をかいた。
「何をなされていらっしゃったのですか? あまりに真剣で、それが気になってしまって」
「あぁ、昆虫観察です」
そう言ってエーミールは、自分の簡単なデッサンと虫の特徴や色、種類を書き記したお手製の図鑑を、数ページ程めくって見せた。こんな麗人に昆虫を見せたら嫌がられるのではないかと多少覚悟した。しかし彼女は図鑑を食い入るように見つめ、目をキラキラと輝かせた。
「これ、ご自身で? まあ、すごい……! そこに蜜を塗って集めているのですね」