夏の終わり

『if もしも生きていたら』


「……」
白い病室の窓際に一人の男が佇んでいた。金色の短い髪が時々揺れ、灰色の目は憂鬱そうに窓の外を見ている。その佇まいは美しいが、彼の体は欠けていた。ぷらりと下がった服の袖から右腕は出ておらず、片方の目には包帯が巻かれており、包帯と包帯の間からはガーゼが見えていた。
「……」
「グルッペンさーん、点滴変えましょうかー」
「……」
看護師がにこやかに話しかけても、ちらりと顔を向けて頷くだけ。看護師には目もくれず外の様子をじっと見る。時々、左手を窓に当てると指で叩く。……トン…………トン…………トン…………トン……トン…………とゆっくりと叩いている。点滴を変えた看護師はそんな彼を見ると、悲しげに笑った。
「グルッペンさん、今日は面会の予約があるんだけど、会えますか？」
「……あ、ぇ……る」
看護師の方を向くと、舌ったらずにそう答える。看護師は、ほっとしたように笑うと面会予約した方が来たらまた来ますと言って病室を出る。
「……」
点滴のガードル台を引くと、ベッドにぼすんと座る。足をぱたぱたさせながら面会者を待つ。生気がないに等しい状態でも誰が来るのかを考えた。親戚は、よくお菓子を差し入れてくれるから親戚がいいなんて考えているとノックが聞こえた。立ち上がりドアの前に行くと、先ほどの看護師がいた。
「グルッペンさん、連れて来ましたよ。ドア開けるので、離れててくださいねー」
看護師に優しく言われると、頷いて窓際に寄る。誰なんだろうと、少しだけわくわくしながらドアを見つめる。
「グルッペンさーん、お友達が面会に来てくれましたよー」
「っ！」