>>1『瓦礫下 待ち望んだ朝が来るなら』<br><br>____全ミヨイコク軍人諸君に告ぐ。我が軍は劣勢。各員奮い、心してかから…__ 「…う、そ。こんなん騙されるかってぇの。」 ブチりと通信の途中で切りぽいとインカムを落とす。物に愛着がないゆえの行動だろうが。彼は己の得物だけは大事にしているらしい。逸れたが、彼はその得物、狙撃銃のスコープを覗き込む。そこから見える戦線はタミアラが多く倒れている結果にあり、通達の通りとはとても思わない。少なくとも自分がいる戦線だけかもしれないが、あんなものではやる気がおきる訳もなく、ふわりと欠伸をひとつ漏らした。 しばらくの時間が経ったが狙撃も必要なさそうだ。むしろ自分は撃つ数を少なくしろと常々言われているもので、トリガーも引かず引き金にも手をかけていなかった。少し昔の話になるが、彼は最初は左持ちの射手であった。ミヨイの昔ながらの話。左利きは異端であるとの事で矯正され今やどちらも打てるようになっているが。そこで目立つのがボルトアクションの速さだ。引き金とトリガーを行き来しなくて良い分彼は射撃がはやく、またその遠くまで見通す鷹の目で射撃命中率が高い。敵味方問わず当たるその銃弾に名付けられたのは悪魔の狙撃だと。鷹なのか悪魔なのか、他者から付けられた評判は表面上しか気にしなかったからどうでもよかったがそこだけは気になってしまった。 ふとスコープを向けた先にきらりと光る物があった。いつも見る、なんなら今も目を当てているスコープだ。真っ直ぐこちらを見るように見ていたそれを持ったスナイパーが笑った気がした。轟音。ばたりと零れ落ちる鮮血。…そして、共に国に仕えた、軍人となった親友から貰った、イヤリングに通した小瓶に入った赤い液体が零れた。喉が引き攣って嫌な音が声として零れる。 「、あ"…ぁああ"あッ!!!い、いたっ、やだ、助けて、やだ、やだっ、来ないでよ…!!」
>>1『瓦礫下 待ち望んだ朝が来るなら』<br><br>____全ミヨイコク軍人諸君に告ぐ。我が軍は劣勢。各員奮い、心してかから…__ 「…う、そ。こんなん騙されるかってぇの。」 ブチりと通信の途中で切りぽいとインカムを落とす。物に愛着がないゆえの行動だろうが。彼は己の得物だけは大事にしているらしい。逸れたが、彼はその得物、狙撃銃のスコープを覗き込む。そこから見える戦線はタミアラが多く倒れている結果にあり、通達の通りとはとても思わない。少なくとも自分がいる戦線だけかもしれないが、あんなものではやる気がおきる訳もなく、ふわりと欠伸をひとつ漏らした。 しばらくの時間が経ったが狙撃も必要なさそうだ。むしろ自分は撃つ数を少なくしろと常々言われているもので、トリガーも引かず引き金にも手をかけていなかった。少し昔の話になるが、彼は最初は左持ちの射手であった。ミヨイの昔ながらの話。左利きは異端であるとの事で矯正され今やどちらも打てるようになっているが。そこで目立つのがボルトアクションの速さだ。引き金とトリガーを行き来しなくて良い分彼は射撃がはやく、またその遠くまで見通す鷹の目で射撃命中率が高い。敵味方問わず当たるその銃弾に名付けられたのは悪魔の狙撃だと。鷹なのか悪魔なのか、他者から付けられた評判は表面上しか気にしなかったからどうでもよかったがそこだけは気になってしまった。 ふとスコープを向けた先にきらりと光る物があった。いつも見る、なんなら今も目を当てているスコープだ。真っ直ぐこちらを見るように見ていたそれを持ったスナイパーが笑った気がした。轟音。ばたりと零れ落ちる鮮血。…そして、共に国に仕えた、軍人となった親友から貰った、イヤリングに通した小瓶に入った赤い液体が零れた。喉が引き攣って嫌な音が声として零れる。 「、あ"…ぁああ"あッ!!!い、いたっ、やだ、助けて、やだ、やだっ、来ないでよ…!!」