「お母様、新しい蝶々を入れる箱が欲しいんです。」と、昆虫図鑑を持ち、もじもじとしながらも母にねだってみる。"そうですね、良いですよ"と母は優しく答えてくれる。「ありがとうございます、お母様!!」と、昆虫図鑑をほっぽって母に抱きつく。呆れながらも母は抱きしめ返してくれる。「私、クジャクヤママユの標本を完成させてきます!!」と、母から離れ、元気いっぱいの笑みを母に見せてから自室に向かう。綺麗な茶色の、目のような模様に見とれてしまうような。クジャクヤママユがそこにはいる"はずだった"。床に転がり、羽は欠け、触覚は取れてしまっている無惨な姿しかそこにはなかった。「え」何故、誰が、いつやった。さっきまでは綺麗なままだったじゃないか。"さっきまでは"綺麗だったんだ、お母様はそんなことしない、女中も、猫も、お父様も。慌てて外に飛び出し、犯人を探そうとした。すると、隣人のルドルフがいきなり出てきた。違うだろう、けど、一応念のために聞いておこう。「私のクジャクヤママユが、ぐしゃぐしゃに、されてしまったんです、貴方ですか?」違うだろう、?何故、そうやって俯くんだ。"ごめん…僕がやったんだ"その一言で、全てが終わった気がした。私がクジャクヤママユにどれだけの時間と知識を費やしたか。全てそれをルドルフがぶち壊した。「…そうか、そうか。つまり君はそんな奴だったんだな。」怒る気力も無い。彼には失望した、ただそれだけだ。ーーーーーーーーーーーーーーーとある幼少の頃の教授のお話。
「お母様、新しい蝶々を入れる箱が欲しいんです。」
と、昆虫図鑑を持ち、もじもじとしながらも母にねだってみる。
"そうですね、良いですよ"と母は優しく答えてくれる。
「ありがとうございます、お母様!!」
と、昆虫図鑑をほっぽって母に抱きつく。
呆れながらも母は抱きしめ返してくれる。
「私、クジャクヤママユの標本を完成させてきます!!」
と、母から離れ、元気いっぱいの笑みを母に見せてから自室に向かう。
綺麗な茶色の、目のような模様に見とれてしまうような。
クジャクヤママユがそこにはいる"はずだった"。
床に転がり、羽は欠け、触覚は取れてしまっている無惨な姿しかそこにはなかった。
「え」
何故、誰が、いつやった。さっきまでは綺麗なままだったじゃないか。
"さっきまでは"綺麗だったんだ、お母様はそんなことしない、女中も、猫も、お父様も。
慌てて外に飛び出し、犯人を探そうとした。
すると、隣人のルドルフがいきなり出てきた。
違うだろう、けど、一応念のために聞いておこう。
「私のクジャクヤママユが、ぐしゃぐしゃに、されてしまったんです、貴方ですか?」
違うだろう、?何故、そうやって俯くんだ。
"ごめん…僕がやったんだ"
その一言で、全てが終わった気がした。
私がクジャクヤママユにどれだけの時間と知識を費やしたか。
全てそれをルドルフがぶち壊した。
「…そうか、そうか。つまり君はそんな奴だったんだな。」
怒る気力も無い。彼には失望した、ただそれだけだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
とある幼少の頃の教授のお話。