「ピエール・ウッツリーニ、美味いぞ?」「俺は、安いので結構です」「ははっ、最近、なんだかやけに素っ気ないな」「……」 そっけない態度を取りたいから取ってるんじゃない。この気持ちが何か分からないからこうなっているんだ。もやもやざわざわして、本当はもっと稽古とかやりたいけど、妙に話し掛けづらくて話せない。「ま、そんなトントン君にはいい子になるおまじないをやろう」 悶々と考えていると、そんなことを言われ黒色のシンプルな小さな紙袋を渡される。こんな手作りチョコなんてさっきあったか?なんて開けてみると、ココアパウダーまみれのいびつなチョコが出てきた。「今年は母様に教えてもらって作ってみたんだ。さぁ、食べてみてくれ」「……いただきます」 ココアパウダーで指を汚しながら、一粒口の中に入れる。「どうだ?うまいか?」 楽しみそうなグルさんの顔を見ると、またぞわっと胸がくすぐったくなる。もぐもぐと、咀嚼すれば飲み込む。「とても美味しいですよ」 彼のチョコレートは甘くて苦かった。おわり
「ピエール・ウッツリーニ、美味いぞ?」
「俺は、安いので結構です」
「ははっ、最近、なんだかやけに素っ気ないな」
「……」
そっけない態度を取りたいから取ってるんじゃない。この気持ちが何か分からないからこうなっているんだ。もやもやざわざわして、本当はもっと稽古とかやりたいけど、妙に話し掛けづらくて話せない。
「ま、そんなトントン君にはいい子になるおまじないをやろう」
悶々と考えていると、そんなことを言われ黒色のシンプルな小さな紙袋を渡される。こんな手作りチョコなんてさっきあったか?なんて開けてみると、ココアパウダーまみれのいびつなチョコが出てきた。
「今年は母様に教えてもらって作ってみたんだ。さぁ、食べてみてくれ」
「……いただきます」
ココアパウダーで指を汚しながら、一粒口の中に入れる。
「どうだ?うまいか?」
楽しみそうなグルさんの顔を見ると、またぞわっと胸がくすぐったくなる。もぐもぐと、咀嚼すれば飲み込む。
「とても美味しいですよ」
彼のチョコレートは甘くて苦かった。
おわり